本日は、平川先生の小論文講座第12回目をお届けします!
[設問]浜松医科大学(医学部医学科)2009年度 80分 750〜800字
「山本周五郎の代表作の1つに『虚空遍歴』という作品がある。その最後の場面で、主人公の中藤中也が死ぬ前に、夢の中の祖父の言葉だといって、付きそうおけいという女性に語りかける次のようなことばがある。
‥‥‥死ぬことはこの世から消えてなくなることではなく、その人間が生きていた、という事実を証明するものなのだ。死は、人間の一生にしめ括りをつけ、その生涯を完成させるものだ。消滅ではなく完成だ。
この作品が書かれたのは、1961年から63年にかけてのこと、日本は高度成長に浮き足立ち、多くの日本人は病いや死のことなど考えもせず、ひたすら生の欲望を無限に追求することに狂奔していた時代であった。
それから30年、高度成長の申し子としての高度医療の達成を背景に、高齢化社会と慢性病の時代が到来し、私たちはだれもが病や死と否応なく向き合わざるを得ない時代を迎えた。(以下、略)」
(立川昭二『生と死の現在』142ページ 岩波書店、1995年より)
下線部に書かれているように 死が完成だとすると、医療はそれにどう関わって行くべきなのか。あなたの考えを750〜800字で書きなさい。
[これまでの話]
これまで、慶応大学、杏林大学、信州大学の3つの大学の医学部•小論文を検討してきました。
いずれの大学の問題にも共通することですが、問われているのは、専門的な知識ではないことが、確認できました。
聞かれているのは、受験生が、論理的思考と患者が命を託せるような人間性を有しているかどうか、ということです。
さて、今回から、少し重たいテーマである「死」について、考えてみましょう。
[今回(12回目)] 「テーマは『死』とそれに対する医療の関わりであるが、実は、命の尊さについて聞いている」
平川先生「さあ、医学部•小論文の過去問検討も、今回で4校目になりました。
これまでの11回の講義で、大学が受験生に何を問うているのか、が明らかになりました。
そして、その問いかけに医学部•受験生が応え、合格答案を書くには、まず、重要な言葉の定義を押さえ、答案構成をすることが大事であることを確認しました。
以上を踏まえて、今回は、『死』について、考えてみます。
医療の道を志す者にとって、避けられない問題です」
A君「はい、確かに『死』と『生きる』こととは、表裏の関係です。
医師になる者が、絶えず意識しておかなければならない事柄です」
平川先生「そうだね。ところで、今回の設問では、短いが参照文がある。
だから、書くに当たっては、この文章をどう生かすか、考える必要があるね」
A君「出題者は、テーマである『死』と医療の関わりについてのヒントをくれているのだと思います。
『 死が完成だとすると』というところから、その『完成』に対して、医療はどう向き合うのかが、問題となります。
『延命』や『自己決定権』について検討することになると思います」
平川先生「なるほど、この講義の最初の頃に言った、『問題文に戻って考える』、ということだね。その通りだ。
次回は、この参照文を踏まえて、さらに『死』についての考えをまとめてみましょう」
[本日の講義のポイント] 「問題文には、むだはない。全て意味がある」
今回の出題のように、引用文が挙げられている設問文は、例年多い。
意味なく掲載されているのではない。
一字一句に、出題者の意図が込められている。
一見、難しそうでも引用文に、設問のねらいが必ず隠されていたり、
解答のヒントがあったりする。
「難しくて、手も足も出ない」と、諦める必要はない。
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スクール東京
最高名誉顧問
成川豊彦
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略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。
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