[今回の過去問]
杏林大学・医学部 2015年度
「うそも方便」ということわざについて、800字程度で論じてください。60分
【これまでの話】
前回から、「うそも方便」について、考えています。今回は、答案構成を行い、それに基づき一気に文章を書きます。
[第79回]
「答案の構成をし、直ぐに書き上げる」
A子 「今週もよろしく、お願いします」
平川先生「はい、よろしく。10月1日から、最後のセンター試験・出願が始まりした。
大学入試まで、あと3ヶ月ちょっとになりました」
A子「はい、少し緊張してきています」
平川先生「そうですか。でも、A子さん、はやる気持ちは抑え、ここは1つ1つ
確実に進めましょう。『急がば回れ』ですよ。
ということで、まずは、前回の続きとして答案で書くべき柱を整理しましょう」
A子「分かりました(「ふっー」と、ため息をつく。ちょっとばかり、
気が張っている様子)」
(しばらくして、以下がA子さんの作成した答案構成です。
〈注〉答案構成とは、出題文で問われている事柄について、重要語句の定義、問題点を整理し、表にしたものです。答案として書くべき事項を、簡単にしたものです。以下、読者の参考になるために詳しく説明していますが、実際は赤の部分だけで十分です)
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うそも方便 |
医 療 |
定義 |
事をうまく運ぶためには、1つの手段として、時にはうそも必要であるということをいう。
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医療とは、医術で、病気を治すことをいう。病気の人が健康を回復するために、真実を追究するものである。
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問題点 |
医学は、病気を治すことが目的である。従って、病に悩む人の実際の状況から出発して、それを科学的見地から分析し、対応していく性格を有する。 |
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うそを付くことの利点 |
↓ ↓ ↓ |
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積極的なうその活用(難病で完治の見込みがない患者への告知の場合等) |
消極的なうその活用(看護師さんや医療スタッフの声かけ) |
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〈例〉 高齢の末期がんの病人に対して、真実を告知するより、「少し、機能が落ちているだけ」のような、あいまいな言い方のほうが、患者は精神的に安定し治療の効果が上がる。 |
〈例〉 日々接する医療スタッフの「顔色が、今日はいいじゃない」「調子よさそうよ」とか、積極的なウソではないが、少し事実と反する励ましの言葉は、病に悩む病人の精神面における健康回復に、効果がある。 |
A子「先生、答案構成です」
平川先生「うん、論ずべき点が、整理できましたね。では、早速、書き上げてみましょう」
A子「分かりました。それでは、今から書いてみます」
平川先生「では、A子さん、本番に合わせて、今から40分で書いてください」
A子「はい、では書きます(緊張した面持ちで、机に向かう)」
(・・・・・・・・・しばらくして、以下が、A子さんが書いた答案です)
「うそも方便」とは、事をうまく運ぶためには、ときには手段として、うそも必要な場合もあるという意味である。
真実を追究する医療と「うそ」とは、本来、相容れないものである。
医療とは、医術で、病気を治すことをいう。病気に悩む人の実際の状況から出発して、それを科学的見地から分析し、対応していくことである。そこには、誤りや間違いは許されない。事実をねじ曲げることは、医療ミス、医療過誤になりかねないからだ。
しかし、事実重視の分野にも関わらず、医療においてもウソを付くことで、かえって治療に役立つ場合がある。どんなケースだろうか。
例えば、80才過ぎの高齢者への末期がんの告知だ。ガンに侵されている事実をストレートに告げることは、本人の治療に役立つだろうか。むしろ、ショックが大きくて、体力的にも衰えている病人の病状を悪化することが予想される。
そんな場合には、「少し、機能が低下しているだけですよ」のような、あいまいな言い方のほうが、むしろ真実を伝えるよりも治療に効果がある。
また、ガン患者への告知のように積極的に真実と異なることを伝えるのではないが、消極的なうそとして、次のような場合も認められうる。
それは、日頃、患者さんに対する看護師さんや医療スタッフの声かけだ。
例え、真実は病気が進行し、顔色が悪かったとしても、「顔色が、今日はいいじゃない」「調子よさそうよ」とか、事実と反した励ましの言葉をかけることだ。そんなウソは、病に苦しむ病人の気持ちを、少しでも楽にし、症状を改善することに役立つものとして、許されると考える。
では、何故、医療においても事実をねじまげても、真実と反することが許される場合があるのか。それは、人には感情があるからだ。健康になるには、肉体面だけではなく、感情を中心とした精神面も大事な要素だからだ。
病に悩む病人の立場に立つなら、時にはうそも治療・改善の一療法と、私は考える。(793字)
平川先生「自分なりの、筋道の通った文になっています」
A子「ありがとうございます」
平川先生「ただし、『うそ』のように同じような表記が何度も表現されていたり、誤字・脱字もあります。もう一度、書き直してみましょう」
A子「はい、(少し、がっかりした様子)」
平川先生「A子さん、もう一度言います、『急がばまわれ』ですよ。そんなことで、しょげない。今やっていることが、合格につながるのです。気を取り直して」
A子「はい、私、頑張ります(ニコッと、笑う)」
平川先生「そう、その意気です。さあ、そろそろ時間です。次回は、答案を完成させます。来週もお楽しみに」
【今回のポイント】
「模試は、本番のように。本番は、模試のように」
受験界で言われてきた言葉に、「模試は、本番のように。本番は、模試のように」という格言があります。普段の勉強では、まるで本当の入試のように気を入れて臨む。そして、本番では、逆に普段の模試のようにリラックスして、持てる力を発揮するということを意味します。
本試験まで、3ヶ月ちょっとです。模擬試験では、失敗しても構わないという気持ちで臨みましょう。その代わりに、徹底的に復習です。そうすれば、本番が逆に楽になります。
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成川豊彦
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略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。
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