[今回の過去問]
産業医科大学(医学部医学科)2011年度 目標60分
次の文章の冒頭は、ある産婦人科開業医から著者への相談です。それに続く著者の文章を読んで、下記の設問に答えなさい。
長年診察している患者から「先生の説明には情がこもっていない」と言われました。
数週間前に彼女の親友が亡くなったことが関係しているかもしれません。どのように
慰めの言葉をかければよかったのでしょうか?(60代。婦人科開業医)
(中略)
患者が「情がこもっていない」と言うに至った事情が、どうにものみ込めなかった私は、直接彼女から話しを聞くことにしました。
彼女の話によれば、亡くなった親友は2歳年上で、とても頼りにしていたそうです。
その親友が、乳癌の再発のため、治療もむなしく亡くなってしまいました。
親友の死に深く落ち込み、生きる気力まで失いかけたちょうどその頃、彼女は新聞でホルモン補充療法のリスクについての記事を読みました。「自分も10年近くホルモン補充療法を受けているから、乳癌になるかもしれない」と不安になり、その婦人科開業医を訪ねたのでした。
彼女はその婦人科医師に、親友が乳癌で亡くなったことや、ホルモン補充療法を続けている自分も乳癌になりはしないか心配だということを、遠慮がちに話しました。主治医であるその婦人科医師が気を悪くしないように、彼女なりに気を使って、おそるおそる切り出したのです。
ところが、その婦人科医師は、話 を最後まで聞くか聞かないかのタイミングで、「何を言っているのですか、ホルモン補充療法で乳癌になるなんて、1年当たり100人に1人もいません。交通事故のようなものですよ」と即答しました。
(中略)
彼女は、その婦人科医師の本性は「冷たい」と直感的に感じました。そして、これまでその婦人科医師の下でホルモン補充療法を続けてきたけれど、病院を変えた方がよいのではないかとまで思うようになったそうです。(佐藤綾子「医師のためのパフォーマンス学入門」、『日経メディカル』日経BP社、2010年6月号、146-147頁より抜粋、1部改変)
〈設問〉 この婦人科医師のどのような行動に問題があったのでしょうか。また、どのようにこの患者さんに接するべきだったのでしょうか。あなたの考えを600字以内で述べな
さい。
[第49回]
前回から産業医科大学の過去問の検討を始めています。小論文は、知識がある人が合格する試験ではありません。題意に応え、筋道だった文章が書くことができればよいのです。平川先生は、A子さんに出題意図は、何か考えてくるように言いました。
A子さんは、どのように考察したでしょうか。
「患者の視点に立つ」
▼平川先生「こんにちは、早速、始めましょうか」
A子「よろしく、お願いします」
平川先生「A子さん、先週出した課題、考えてきましたか。どういう事を産業医科
大学は求めているのでしょうか」
A子「個々の患者を大事にする。同じ人として尊重するということです。
相談者は、自分は患者とは異なる人間、一段と高い種族とでも思っていま
す。自分は病人ではない。病とは無関係の世界にいると思い込んでいます。
だから、病気になった人の気持ちが分からない。分かろうともしない。
『話 を最後まで聞くか聞かないかのタイミングで、“何を言っているのです
か、ホルモン補充療法で乳癌になるなんて、1年当たり100人に1人もいま
せん。交通事故のようなものですよ”と即答』するような冷たい対応が出来
るのだと思います」
平川先生「なるほど。それで、A子さんはどうすべきだと思います」
A子 「私は、医者も患者と同じ人間。いつ病に罹るか分からない。何の違いも
ないという意識を持つこと。そして、病については、『病気』という言葉が
表現するように『病は気から』だと思います。病気になるというのは、身体
の一部が病んでいるのと同時に、気持ちも病んでいる。
病気を治すというのは、身体の病んでいる部分を直すと同時に病んだ気持
ちも直す、そんな姿勢でいることが、医師には求められているのだと思いま
す。だからこそ、医者は、その人の気持ちの部分にも十分に配慮する必要が
あると思います。それが、患者の自己決定権の問題だと思います。
しかし、これまでの医師の育成には、病を治すとはどういうことか、とい
う視点が弱かったと思います。自分自身の問題でもあるという観点が乏しか
たと思います。産業医科大学は、これからの医師になる者の課題を問うてい
ると思います」
平川先生「そうですね。よく考えてきましたね。病気を治すということは、どうい
うことか、これが今回のメインの問題ですね。彼女の親友の死を、交通
事故に例える発想自体、相手の気持ちに配慮していない。相談者である産
婦人科医は、患者の立場に立って考えていないことが分かります。病の人
の立場に立っていないからこそ、平気で他の病人の死を『物』のように扱
う。患者は物ではない。自分も同じなんだと思ってこそ、その人の意思を
尊重できるのです。
よく、インフォームド・コンセントといわれますが。中身は難しくあり
ません。病を患う人の立場に立つ、ということです」
A子「私は、こんな医師にはなりたくありません。『長年診察している患者から
“先生の説明には情がこもっていない”と面と向かって言われても、何が問題
なのかさえ分からないような人間には、なりたくありません」
平川先生「そうですね。早ければ、20代半ばで国家試験に受かり、医師となり周
りからは『先生、先生』と持ち上げられる。自分は病気とは一切無関係、
高学歴、特殊な才能を持つ特別な人間なんだと勘違いする。そのことが実
は患者の医師に対する不信感を持たせているのです。
『ドクター・ショッピング』という言葉を A子さんは、知っていますか」
A子 「いえ、知りません」
平川先生「『ドクター・ショッピング』とは、診断や治療に納得できず、何カ所も
医療機関や医者を訪ね歩くことをいいます。そんなショッピングが、全国
で増えているのです。このままでは、医療不信が広がりかねません。一部
の良心的な医師、医療機関に過大な負担がかかるばかりです。
だから、産業医科大学では、このような医師の誤った意識について取り
上げ、これから医療の道を進む者に問いかけたのです。
医者は、病気を治すとはどういうことなのか、自分自身の問題として捉
え、常に患者の不安、苦しみに配慮する視点、患者の自己決定権を踏まえ
て、治療を進めるという観点を忘れてはならないということです」
A子 「ポイントは、医者も患者と同じように病気にも罹る同様の人間なんだと考
えその点から個人の自己決定権、それを踏まえた情報の提供(インフォーム
ド)と同意(コンセント)に基づく医療の重要性を展開する。
以上の点から、この相談者の医師はどう接すべきだったか。こんな具合に
答案構成をします」
平川先生「そうですね。それでいいと思います。できれば、書き上げた構成を
次週は、まず見せてください。答案構成さえ、しっかりしていれば小論文
は9割は完成したと、同じですから」
A子「そうですね、分かりました」
平川先生「では、来週は答案を書き上げましょう」
A子「はい、今日はありがとうございました」
平川先生「こちらこそ、ありがとうございました。また、来週」
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略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。
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