[今回の過去問]
岡山大学(医学部医学科) 2007年度
下のグラフは、各国の平均余命(グラフ左)、および国民1人当たり医療費と医療の満足度の関係(グラフ右)を示している。この二つのグラフからどのような事柄を読み取ることができますか。さらに、医療における満足度について多面的に論じなさい(全部で600字以内)。目標45分
【これまでの話】
前回まで、日本医科大学(医学部)の1行問題でハンセン病を例に挙げて、「医療における偏見」について考えてみました。今回から岡山大学(医学部医学科)の問題を検討します。
[第83回]
「特徴を読み取る」
A子 「よろしく、お願いします」
平川先生「こちらこそ。さて、今回は国立大学の岡山大学(医学部医学科)2007年度の問題を扱います。国立大学の場合、二次試験において小論文を受験科目としている場合、本問のように資料を読ませ、分析させる出題が、結構あります。資料自体は、2007年度ということで、多少古いですが、どう分析しまとめるかという点で練習になります。
A子さんも第1志望は、国立大学でした。本番のつもりで取り組んでみましょう」
A子「はい、分かりました」(国立大学と聞いて、急に緊張した顔になる)
平川先生「では、答案構成として、どんな事柄を柱としますか」
〈注〉答案構成とは、出題文で問われている事柄について、重要語句の定義、問題点を整理し、表にしたものです。答案として書くべき事項を、簡単にしたものです。
A子「そうですね、まず出題に沿って、各国の平均余命(グラフ左)から読み
取れることを述べ、次に医療の満足度の関係(グラフ右)から分かる特徴
を言います。そして、最後に医療における満足度の問題点をいろいろな角
度から指摘します」
平川先生「なるほど。では早速、左のグラフから分かる特徴を言ってみてくだ
さい」
A子「日本の平均寿命は、80才ちょっとです。世界一の長寿国を表していま
す」
〈注〉日本は、2017年現在、84.10才、香港の84.68才についで世界第2位の長寿国です。他の国も、ア
メリカの78.54才を除いて、2007年から2017年の11年間でいずれも80才を超えるまでに伸びてい
ます。主要国で平均寿命が、80才を超えるまでになりました。
平川先生「確かに、当時から日本は世界でも平均寿命が長い国として知られて
いました。では、右のグラフから分かることは何でしょうか」
A子「右側のグラフは、国民1人当たりの医療費と医療の満足度の関係を表して
います。このグラフから分かることは、日本はイギリスやスウェーデンよ
り若干医療費は高いですが、カナダやドイツよりも安く、年間4000ドル以
上負担するアメリカの半分以下であることが分かります。
戦後のわが国の医療制度のすぐれた点として、国民皆保険の制度が採られ
た点が指摘されます。
確かに医療に関する費用は安く済んでいるのですが、もう一方で肝心の
医療に対する満足度は70%以下です。医療費が日本の倍以上のアメリカでさえ、90%近くの人が満足しているのに、かなり低い結果だといえます」
平川先生「では、このことは何を意味するのでしょうか」
A子「日本の医療は、国民皆保険で国民1人1人の健康を図るという点では、平
均寿命の伸びに見られるように、一定の成果は出ています。しかし、医療
内容の質としては、利用者である国民のニーズに必ずしも答えきってはい
ないことを、示していると思います」
平川先生「その通りですね。ところで、この出題は、10年程前です。日本社
会は、そのあと東日本大震災、熊本地震等の未曾有の災害危機を経
験しました。また、米中対立等により経済的・社会的にも行き詰まる
状況を招いています。
今年10月の消費税増税にみられるように、国民の負担増も覚悟し
なければなりません。さらに、日本の人口減少ともに進む高齢化社
会も深刻な問題です。
国の福祉関係費用は当時と異なり、もはや無制限に増やすわけに
はいかない状況にあります」
A子「医療の質を向上させるとともに、もう一方で患者自身の意識改革も必要
ですね。
健康管理は、本来1人1人の自覚から始まります。これからは、国民が国
の政策の不十分さを、ただ批判しているだけでは問題の解決にはなりませ
んね。国、医療関係者、国民の三位一体になった協力関係が欠かせないと
思います」
平川先生「そうです。そのあたりを、答案構成してみてください」
A子「分かりました」
〈以下が、A子さんの作成した答案構成です〉
平川先生「大枠がまとまりましたね。では、そろそろ時間です。次回は、A子
さんが作った答案構成を基に、文章を書き上げましょう」
A子「はい。来週もよろしくお願いします」
平川先生「了解しました。あと80日ほどでセンター試験です。この数日、急
に朝晩の気温が下がるようになってきました。体調管理には、気をつ
けてください。来週をお楽しみに」
【今回のポイント】
「無理はしない」
センターまで、80日余り。毎日、必死に勉強している人も多いでしょう。しかし、そこは人間。無理は禁物、本番前に病気で倒れてしまっては、元も子もありません。時には、休みを取ってください。リラックスすることも、勉強を集中して、効率よくやるために必要です。
もっとも、十分な休養を採っていたとしても、ここ最近の朝晩のように急に冷えることで、体調を崩すこともあるでしょう。
そんなときは、調子が悪くても「頑張る」より、そこは思い切って、トーンダウン。2,3日、勉強の量を減らしましょう。
さらっとノートを見直すとか、単語や重要語句の記憶をするとか。
「無理はしない。しかし、確実に本番に向けて力を蓄える」そんなイメージで、毎日を過ごしてください。
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スクール東京
最高名誉顧問
成川豊彦
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略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。
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