受験ノウハウ

平川先生の小論文講座⑪

本日は、平川先生の小論文講座第11回目をお届けします!

[設問]
ドクター•ショッピングという言葉を聞いたことがあるだろうか。
何も医者を買い漁るわけではない。診断や治療に納得できず、何カ所も医療機関や医者をたずね歩くことをいう。

(中略)
ドクター・ショッピングは昔からあるが、現代医療の高度化、細分化によって生み出された産物である。医師は自分の分野にこだわり、患者の身体症状の原因が他領域にあることに気づかない。そして高額な検査を繰り返す。これが医療財政を圧迫し、患者へは精神的・身体的負担が大きくのしかかるのである。
この様な弊害から脱却させようという試みが総合内科などでの、全人的医療なのであるが、全身をみること、全科的にみることが、全人的医療と勘違いしてはいけない。全人的医療とは、生物学的、社会的、心理的、倫理的、総合的な存在として患者を診ることである。すなわち、患者を診るとき、「疾患だけ」を診るのではなく、「その人」を診ることが、全人的医療の基本なのである。
小野繁「ドクター・ショッピング」新潮社より
文章を読んで、あなたの考えを600字以内で書きなさい。
信州大学(医学部医学科)2007年度(60分、600字以内)
[紙面の都合で、問題文の一部を省略しました]

[これまでの話]
前回では、「ドクター・ショッピング」の定義を確認し、答案構成を作り上げました。
今回は、この構成に基づき、答案を完成させます。

[今回(11回目)] 「定義と答案構成を踏まえて書く」

A君が、やって来ました。早速、先週まとめた定義と答案構成に基づき、書き上げます。

[以下、A君が完成させた答案です]

ドクター・ショピングとは、患者が、診断や治療に納得できず、医師や医療機関を何箇所も訪ね歩くことをいう。最近、この種の人が増えている。

筆者は、その背景として、医療の高度化・細分化により、医師が専門分野にこだわっていることを指摘する。患者は、医療機関に振り回されていると感じ、更に別の病院を訪ねる。その弊害として、病人の精神的・身体的負担が大きくなり、また、高額医療費が重荷となる点を指摘する。
筆者は、このような現状の医療から「全人的医療」へと転換すべきと主張する。「全人的医療」とは、生物学的、社会的、心理的、倫理的、総合的な存在として患者を診ることをいう。この結論に、私も一応、賛成する。問題は、どう実行するかである。
まず、医師は、「疾患だけ」を診るのではなく、「その人」を診るようになるための意識改革が必要だ。病気は、その人の生活状況、人間関係などの要因が重なって起こるからだ。しかし、医療従事者が一人で、意識改革を進めることは不可能である。そこで、医療内部においては、チーム医療体制を取り入れる。そして、IT機器を活用しデータの共有、スタッフ間の情報の緊密化を図ることが必須だ。
また、医療外部においては、ソーシャル・ワーカーや民生委員・行政などと連絡を取ることが、効果的である。
課題としては、食の安全をどうするかの問題と、医療の実効性を担保するために、セカンド・オピニオンなどの検討が必要である。(600字)

平川先生「『ドクター・ショッピング』の定義に基づき、『答案構成』が練られているので、論述に流れがあります。短い文章ですが、よくまとまっています。出題の意図に応える合格答案といえます。
医学部•小論文の答案の書き方が、かなり分かってきたね」

A君「はい、定義を踏まえ、そこから問題点を指摘して、論理を進めていく。先生の指導を受けるまでは、医学部の小論文というのは、大学での講義に必要な専門的知識がなければいけないと、思っていました。予備校は、基本的な医学用語は覚えろと、しきりに言っていましたから。
でも、実際に過去問に当たってみると、そんな専門用語は、むしろ問題文で説明してあります。今回の信州大学の過去問が、よい例です。機械的に覚えておく必要は、ありません。
むしろ、大事なのは論理だ、ということを痛感しました。常日頃から、筋道立ったものの考え方を、意識しておく方が大事ですね」

平川先生「そうだね。そのとおり。私が、最初に言ったことだね。
大学が医学部•小論文で問うているのは、医師としてふさわしい資質、つまり論理的思考力があるか、患者が命を預けるに値する人間性があるのか、これだけなんだよ。
だから、論理的に思考し、それを記述することを、訓練さえすればいいんだ。
小論文の意義が分かったところで、次回は、人の『死』について取り上げた浜松医科大学の2009年度の問題を検討してみよう。お楽しみに」

[本日の講義のポイント]  「小論文で、聞かれているのは、論理的思考力と、人間性」
A君の今回の答案で、明らかなように、大学が皆さん医学部受験生に聞いているのは、専門的な知識ではありません。
医学部にこれから進むという皆さんに、ぜひとも聞きたいのは、医師としての資質の最も大事な、冷静に筋道立って考える力があるか、そして、患者が命を預けるに値する人間性があるか、だけです。決して難しいことを聞いているのではありません。

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スクール東京
最高名誉顧問
成川豊彦
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略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。

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