[今回の過去問]
横浜市立大学(医学部医学科)2007年度 目標60分
臓器移植と生命倫理について、具体的な事例を挙げながらあなたの考えを1,000字以内にまとめて述べなさい。
〈注〉都合により、千葉大学(医学部)の過去問ではなく、横浜市立大学(医学部医学科)の問題を掲載します。
[第61回]
「まず、臓器移植の現状について知る」
A子 「今日も、よろしくお願いします」
平川先生「こちらこそ、お願いします。さて、今日から横浜市立大学(医学部医学科)2007年度
の問題を取り上げます。今から12年も前と思われるかも知れませんが、テーマは臓器移
植。難病で、臓器提供は、移植でしか回復の見込みのない病人にとっては、唯一の望
みです。今日においても医療における重要な課題であることに、代わりはありません。
なお、この問題を考えるにあたっては、大まかな知識があったほうがよいでしょう。
簡単に説明します。
臓器移植とは、病気や外傷によって損なわれた臓器や組織の機能を代換させるため、
手術によって他から同じ臓器や組織を移植することをいいます。臓器提供について、公
益社団法人・日本臓器移植ネットワークによれば、提供は、脳死後あるいは心臓が停止
した後にできるということです。
2010年7月17日に改正臓器移植法が全面施行され、生前に書面で臓器を提供する意思
を表示している場合に加え、本人の臓器提供の意思が不明な場合も、家族の承諾があれ
ば臓器移植できるようになりました。これにより、15歳未満の方からの脳死後の臓器提
供も可能になり、誰もが最期を迎えたときに、他の人の命を救うことができるようにな
りました。
今年4月末にも6歳未満の女の子の臓器から、①10歳未満の男の子には心臓、②10歳
未満の女の子には肝臓、③10代の女性には腎臓が提供されたとの報道がありました。
ある新聞には、臓器の提供をあらかじめ明らかにしていたため、その方の死後、提供を
した家族が『子供は亡くなってしまったが、別の人の命を救ったことで生き続けてくれ
ていると思うと、救われる』との投書が掲載されていました。
臓器移植は、もはや治療の1つの手段として、私たちの日常に受け入れられたものと
なっています。
なお、臓器移植ネットワークは、『あなたの意思で救える命があります。
自分の意思を尊重するためにも、臓器移植について考え、家族と話し合い、
〈提供する〉 〈提供しない〉どちらかの意思を表示しておくことが大切です』と、広く臓器の提供を呼びかけています」
A子「本当に、治療の手段の1
つになっていますね。海外
ではもっと頻繁に行われて
いると聞きました」
〈日本移植学会のホームページより〉
平川先生「はい、少し古い資料ですが、移植学会のホームページに公表されているデータによ
れば、日本はアメリカやヨーロッパ諸国の40分の1から15分の1程度に留まっています。
臓器といっても、体の一部です。完全に機能が停止してしまっては、移植は困難です。
そこで『死』の時期をどうとらえるかが、問題になります。この死の時期の判断につ
いて、これまで、我が国は、かなり慎重でした」
A子「なるほど、よく分かりました。とすると、今回の出題のポイントは、人の死の時期は、
いつかということですね。
生命倫理、すなわち、人の生と死に医療がどう関わるかが、ここで問題となるわけです
ね」
平川先生「ええ、提供者本人の意思を尊重すれば、脳の機能が停止した時に『死亡』したとして、
移植可能にすればよいいのでしょう。しかし、残された家族のことを考えると、少しでも
回復可能性があるのなら、安易に『死』を認定すべきではない。そこで、人の『死』の時
期について、どうしても慎重になってしまう。その結果、臓器を必要とする患者は多いに
も関わらず、移植数が少ない状況が続いていました」
A子「そういえば、最近は余り聞かなくなりましたが、一時、日本では提供者がいないので、海
外で移植手術をするとのニュースがありました。背景には、こんな問題があったんですか。
先生のお話し、よく分かりました」
平川先生「はい、ありがとうございます。本来自国内で解決すべきなのに、日本人は金があるの
で海外で移植を受けると誤解され、欧米諸国から随分と批判を浴びました。
ところで、中国や東南アジアでは、臓器移植はビジネスです。犯罪組織ともつながっ
た一大市場となっています。ギャングたちは、人を牛や豚のような家畜同様に扱い、臓
器を売り買いしています。病に苦しむ者の弱みにつけ込んだ犯罪が横行しています。
臓器移植は一刻も早く、中山教授のips細胞のような再生医療にとって変わるべきで
しょう。
さて、以上のような臓器提供をめぐる状況を踏まえて、今回の『臓器移植と生命倫
理』について、考えをまとめてみましょう。
まず、答案構成の柱として、どんなことが大事ですか」
A子「最初に、①臓器移植とはどういうものか定義を述べる。その上で、現状を挙げる。
②問題点として、生命倫理との関係がある。『死』を経て初めて可能な治療法なので、人の
『死』が、いつなのか問題となる。③今後の課題として、ips細胞等のような再生医療の発展
が考えられます」
平川先生「そうですね。A子さんが指摘した3つが検討すべ点でしょう。
そろそろ、今回も時間になりました。来週までに、答案構成をしておいてください。
次は、その構成を検討しましょう」
A子「はい、分かりました。今日はありがとうございました」
平川先生「こちらこそ、ありがとうございました。来週もお楽しみに」
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国公立大学・医学部の小論文では、今回の問題のように、その当時の社会的な話題を挙げることが、よくあります。横浜市立大学(医学部医学科)2007年度の過去問も、当時関心を集めていた臓器移植法についての基本的な知識があれば書ける問題でした。決して、知っているかどうかを聞いているわけではありません。
ただし、基本的な知識がないと今回のような問題は書けません。
読者の皆さんも受験勉強に、一生懸命になるのも大切ですが、社会への関心も忘れないように。せめて、新聞の朝刊の見出しか、朝のテレビやネットでのニュースのタイトルには、目を通しておきましょう。
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平川先生の小論文講座58
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最高名誉顧問
成川豊彦
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略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。
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