受験ノウハウ

平川先生の小論文講座64―浜松医科大学(医学部医学科)2011年度―

[今回の過去問]
浜松医科大学(医学部医学科)2011年度 目標80分

次の文章を読んで、以下の問いに答えなさい。

先日のことであるが、「精神の分子的基盤」をテーマとするシンポジウムに参加した。
演者の話はざっとこんな内容である。ヒトを含む多くの動物種において、記憶を獲得した後、ある種(例えば恐怖)の記憶を想起する場合、最初に海馬の働きを必要とするが、時間の経過とともに徐々にその海馬依存性が減少する。どうやら、記憶を保存する能領域がほかに移行するらしいのである。その移行の詳しい仕組みはまだわからない。しかし今後、海馬の神経新生を適切に制御することで、恐怖記憶が保存される能領域をコントロールでき、トラウマ記憶が原因となるPTSD(心的障害)の新たな予防や治療法の開発につながることが期待される・・・・・・ 
 その話しの途中で演者は、どういうつもりか、ある知人作家の小説の一部を紹介した。
主人公がある日、とある町の片隅で、「いらなくなったあなたの記憶を買います。ほしい記憶を売ります。」と書かれた看板を目にして、その店の中年の男に看板に偽りはないかと尋ねた。・・・・・・それから数時間後、主人公は自宅で100万円を手にはしゃいでいた。ほんとうに嬉しくてしようがなかったが、数日経つと不安になってきた。「いったい自分は何の記憶を売ったのだろうか」と。不安はピークに達し、自分はひょっとしたら取りかえしの付かないものを売ったに違いないと思い、急いで先の店に行った。
 幸いにもその中年男は店にいたので、「この100万円をそのまま返すから、自分の売った記憶を戻してくれないか」と頼んだ。男は当初無理だと断っていたが、そのうち仕方がない顔をして「それじゃ、こうしましょう。どうしても記憶を返してほしいのなら、その記憶を売ります。ただし110万円です」と折れた。主人公は結局、110万円を支払って元の記憶を買い戻した。その記憶とは「今朝、犬に吠えられた」というものだった。

注)PTSD: Post Traumatic Stress Disorder (心的外傷後ストレス障害)

 設問 記憶の分子レベルでの解明が進むことで、将来、精神疾患の治療として記憶の操作が行われるようになるかもしれない。そのような未来社会の可能性に関して、あなたの意見を800字以内で述べよ。

【これまでの話】
 前回まで、3回に渡り横浜市立大学(医学部医学科)2007年度の「臓器移植と生命倫理」のテーマを検討しました。これまでの連載でも繰り返し述べてきた、出題者の意図に応えピントを合わせることが、大事だということを確認しました。
 今回からは、浜松医科大学(医学部医学科)2011年度の問題の検討に入ります。

[第64回]

「記憶の操作が、許されるか」

A子 「今週も、よろしくお願いします」

平川先生「こちらこそ。さあ、今日から浜松医科大学の問題です。
    精神疾患の治療に、記憶操作を行ってよいか、その是非を考えるものです。
     さて、A子さんどう考えますか」

A子「えーと、記憶操作ですか。考えたこともないです。どう検討するんだろう」
  (慌てて、問題を見直している)

平川先生「焦ることはありません。実は、最近こんな種類の、普段考えたことがないテーマを、
    試験場で考察するという設問が増えています。代表的なのが、愛知医科大学、慶應義塾
    大学ですね」

A子「そうなんですか。あらかじめ訓練しておかないと、本番では、パニックってしまいそうです
  ね」(大きくため息をついて、ホッとする)

平川先生「そうです。それがねらいです。考えもしなかったことを問題提起して、医学部受験生
    が冷静に分析し、対応できるかを試しているのです。
     普段から、言葉の意味、背景にある考えを踏まえた論理的思考の訓練をやっていれ
    ば、なんということはありません。
     今回も、要は、治療において、記憶操作のような患者の人格まで変える恐れのあるこ
    とをしてよいか、ということを聞いているだけです。
     科学の発達により、前回の臓器移植ばかりでなく、人の脳の働きまで変えてしまう
    ようなことが、可能になってきています。そこで、人とは何か、医療とはどうあるべき
    か、医学の原点を考えさせようというのが、今回の問題です」

A子「なるほど、出題者の意図が分かりました。受験生に、目指す医療本来の姿を、再認識させる
  ための出題ということですね。
   そうか、こういうときにこそ、原理、原則、大きな視点から問題を見る必要が、あります
  ね」

平川先生「はい、その通りです。決して、精神疾患がどうだとか、PTSDとは、どういうものか知っ
    ていなければ書けない、ということではありません。医学部を目指す者として、最低限
    の知識は、持っておく。その上で、設問に合わせて柔軟な思考ができるかを、聞いてい
    るだけです」

A子「分かりました。そうだとすると答案では、まず確認すべきは、医療とは本来どうあるべき
  か、述べます。治療とは、医術で患者の病を治すことをいいます。したがって、精神疾患に
  関しても治療の必要があれば、患者の恐怖の記憶等の障害となっているものを取り除くこと
  が、許されるように思われます。
   しかし、精神疾患に関しては、人の脳の働きそのものです。人間の精神活動に関する機
  能の治療として、個人の尊厳そのものに関わる極めてデリケート分野です。慎重に対応する
  必要があると思います。
   よって、営利目的の記憶操作は、原則として禁止すべきです。
   設問の話しにあったような人の記憶の売り買いは、許されません」

平川先生「そうですね。記憶の操作が、今後可能になるとしても、そのような行為は、必要最小限
    に留めるべきでしょう。課題文にあるような、記憶の売買は絶対に認めるべきではあり
    ません。
     では、以上の議論を踏まえ、A子さん、次回は答案構成を作ってきてください。一緒に
    検討しましょう」

A子「はい、分かりました。先生、それにしても、今の医学の発展て、怖いくらいですね。
  前回までの臓器移植で、私、実はネットで調べたんですけど、中国ではヒトの脳を含めた頭部
  の移植まで議論されているらしいですね。今回の記憶操作を含め、これからの医療は人と
  はどうあるべきか、医療はそれにどう対応すべきか、こんな根本的な価値観まで問題にする
  必要があるのでは、と思いました」

平川先生「ええ、本当ですね。医療は、医療関係者の世界観、価値観まで問われる事柄になって 
    きていますね。次回は、原理原則に戻って、答案構成を考えてみましょう」

A子「はい。今日は、ありがとうございました」

平川先生「こちらこそ、ありがとうございました。来週も、お楽しみに」

【今回のポイント】
「奇をてらった問題こそ、原理・原則に戻ろう」

  「記憶操作?考えたこともない」と慌てる必要はありません。受験生は忙しいのです。「記憶操作」について、考えている者は、まずいません。そんなこと考えている暇があったら、英単語の1つも覚えるほうが合格につながります。
 
 一見、奇をてらった問題こそ原理・原則にも度って考えてみましょう。
 夢を、絶対に実現!!

* * * * *
【メルマガ会員募集中!!】
ブログでは、語り尽くせない、「書くコツ」をメルマガで、お伝えしたいと思います。
ご登録を、お願いします。

〈医学部・受験の電子書籍、ペーパー書籍の案内〉

1、「小論文の最終チェック」
本書は、受験生のため、すぐにでも小論文が使えるノウハウが、
述べられています。
各大学の過去問の答案例を基にしています。
読めば、それだけで答案作成のイメージが付きます。
夢を必ず、実現!

■電子書籍版500円(税込)
https://amzn.to/2H5ouGO

■ペーパー書籍
近日発売予定

さあ、あなたもこれを見たら
アマゾンで本書をダウンロード!
スマホ、タブレットで、
どこでもチェックできます。

2、「読むだけで身につく医学部・小論文 重要ポイント」
間近に迫った小論文対策にぴったり。

■電子書籍版500円(税込)
https://amzn.to/2S9BaSf

■ペーパー書籍1,620円(税込)
https://amzn.to/2tlEZoD

3,〈医学部・受験のレクチャーの案内〉

4月より、医学部・小論文「重要ポイント」のミニ講義をyoutube
で放映中。
https://www.youtube.com/watch?v=AEObLrQAxiQ&feature=youtu.be

 

* * * * *
平川先生の小論文講座58
スクール東京
最高名誉顧問
成川豊彦
~~~~
略歴
昭和49年(1974年)
Wセミナー・グループを設立。
平成12年(2000年)
国際著名人年鑑「InternationalWHO’SWHOofProfessionals」に選出される。
平成21年(2009年)
司法試験・予備試験専門の少人数制予備校「スクール東京」の最高名誉顧問に就任。
司法試験・予備試験の合格に向けて、自ら直接指導。
現在
中国・西南法政大学客員教授も務め、教育・健康の分野において国内外で活躍中。

▼本日も、ブログ記事を読んでいただき、ありがとうございました。あなたの1クリックは、私が記事を書く、大きな原動力となります。以下のバナーをクリックして、ランキング・アップに、ご協力ください。

にほんブログ村 受験ブログ 医学部・医療系受験へ

クリック、ありがとうございます!

【成川豊彦の関連ホームページ】
● 成川豊彦オフィシャルサイト「合格の森※成川先生の「元気が出る動画」が満載!
○ 司法試験・予備試験専門の個別指導予備校「スクール東京
├ お悩みやご質問は、お気軽に成川先生へのメール」まで。
└ 全国どこでも、講演に駆けつけます! お気軽に成川先生・講演のご依頼」まで。

【司法試験・予備試験の個別指導校「スクール東京」のおトク情報】
フェイスブック
ツイッター

関連記事

  1. 受験ノウハウ

    「幸運のバロメーター!」

    -----------------------------------…

  2. 受験ノウハウ

    「勉強にもマナーを」

    医学部への合格を目指している18歳の男性から聞いた話です。通勤・通学の…

  3. 受験ノウハウ

    「被災の郷里に貢献するために」

    もう、7年も前のことになります。宮城県のA君(27歳)が、…

  4. 受験ノウハウ

    「後輩に、先を越されるな」

    医学部受験生のあなたへ。最近、受験生のA君(18歳)から聞いた話。地方…

  5. 受験ノウハウ

    「成功・合格の目安として、次の2点を見ることにしています」

    私は一切、行かないのですが、かつて教えた受験生の友人がママをやっている…

  6. 受験ノウハウ

    「『こわいこと』とは?」

    -----------------------------------…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Amazonにて、電子書籍版・ペーパー書籍版発売中!

Amazonにて、電子書籍版・ペーパー書籍版発売中!

2019年7月
« 6月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

  1. 受験ノウハウ

    平川先生の小論文講座⑨
  2. 受験ノウハウ

    読者の皆様へ
  3. 受験ノウハウ

    「粛々と待つ!」
  4. 受験ノウハウ

    平川先生の小論文講座67―横浜市立大学(医学部医学科)2009年度―
  5. 受験ノウハウ

    「勉強にもマナーを」
PAGE TOP